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第14回日本高齢消化器病学会学術集会 プログラム

■ 特別講演
百寿者研究からみた高齢者医療の在り方(仮題)
広瀬 信義(慶應義塾大学病院老年内科)
■ パネルディスカッション
パネルディスカッション1 (指定 一部公募)
高齢者の下部消化管疾患の診療ガイドライン作成に向けて
オーガナイザー:藤山 佳秀(滋賀医科大学消化器内科)
三浦 総一郎(防衛医科大学校内科)
クリニカルステートメント:
1.高齢者IBD(指定 一部公募)
CS1★高齢者のIBDは比較的遠位腸管に発生するとされるが、血管障害を伴うと病状が悪化しやすく、重症化する症例もあり注意が必要である。
CS2★高齢者クローン病は腸管感染症を含め他疾患との鑑別が困難な場合がある。
CS3★高齢者IBDの手術は術中、術後の合併症がおきやすい。
2.高齢者の下血(OGIB、大腸憩室、虚血性大腸炎含む)(指定 一部公募)
CS4★高齢者の下血に対する緊急CFは有用であり、超高齢者(>85)においても安全に行えるが、前処置や合併症に注意する必要がある。
CS5★高齢者のOGIBは若年者に比べて血管病変が多く、服薬症例が多い。とくにNSAIDs(低用量アスピリンを含む)や抗血小板薬服薬症例が多い。
CS6★高齢者においてもダブルバルーン内視鏡は非高齢者と同様に深部まで挿入可能である。ただし、合併症への注意は必要である。高齢者のカプセル内視鏡ではカプセル滞留に注意が必要である。
CS7★高齢者に強力な下剤や止瀉剤を投与したり、内視鏡の前処置を施したりすると腸管虚血を誘発しやすいので注意が必要である。ただし、虚血性大腸炎は年齢よりむしろ血管の閉塞部位と程度により予後が左右される。
CS8★憩室出血は高齢者においても大腸出血の原因として最も多く、基礎疾患(心疾患や脳血管障害)を有している率が高い。服薬症例(NSAIDs (LDA含む)や抗血栓凝固薬併用)が多い。内視鏡的止血のメリットは大きい。
CS9★高齢者の憩室穿孔は女性に多く、慢性疾患合併、薬剤服用例(NSAIDs服用例)および便秘を伴う例が多かった。
3.大腸癌(指定 一部公募)
CS10★大腸内視鏡的EMRに関しては、高齢者あるいは後期高齢者(>75)においてもとくにリスクは増加しない。
CS11★腹腔鏡下直腸癌手術でのリスクや根治性は非高齢者と変わらない。腹腔鏡下大腸手術は、開腹に比べ術後の回復が早く、高齢者で推奨される。
CS12★高齢者進行癌・再発大腸癌の化学療法は同様の効果が期待できる。ただし、個々の症例においての慎重なPSの見きわめが必要。
パネルディスカッション2 (指定 公募なし)
高齢者の上部消化管疾患の診療ガイドライン作成に向けて
オーガナイザー:坂本 長逸(日本医科大学消化器内科)
高橋 信一(杏林大学第三内科)
クリニカルステートメント:
「高齢者出血性消化性潰瘍およびNSAIDs潰瘍」について(指定)
CS1★出血性消化性潰瘍に対する内視鏡的止血術は高齢者においても非高齢者と同様に有用である。
CS2★高齢者では非高齢者と比べNSAIDsや抗血栓薬、抗凝固薬服用による潰瘍リスク、出血性潰瘍リスクが高い。
CS3★NSAIDsや抗血栓薬、抗凝固薬を服用する高齢者は、酸分泌抑制薬の併用が勧められる。とくに潰瘍既往歴を有する高齢者では予防的内服が必要である。
パネルディスカッション3 (指定 一部公募)
高齢者の肝臓疾患の診療ガイドライン作成に向けて
オーガナイザー:森山 光彦(日本大学消化器肝臓内科)
鈴木 一幸(岩手医科大学第一内科)
クリニカルステートメント:
1.高齢者急性肝障害(指定)
CS1★高齢者の急性肝障害ではウィルス性肝炎は少なく、薬物性肝障害が多い傾向にある。基礎疾患を有する例、亜急性やLOHFの病型が多く、予後不良の場合がある。
2.高齢者B型慢性肝炎(指定)
CS2★高齢者B型慢性肝炎では、ALT値が正常でも血小板数15万以下かつウィルス増殖が持続する例では、核酸アナログ製剤を第一選択とする抗ウィルス療法の対象となる。
CS3★高齢者であっても、B型肝炎ウイルスキャリアーでは、免疫抑制・化学療法や抗TNF-α生物製剤の使用に伴いB型肝炎ウィルスの再活性化をきたすことがあり、抗ウィルス剤(核酸アナログ製剤)の予防投与が必要である。また、HBs抗原陰性でも、HBc抗体またはHBs抗体陽性の場合には、治療中・治療後の厳重な経過観察(AST, ALT, HBV DNA量など)を必要とする。
3.高齢者C型慢性肝炎(指定 一部公募)
CS4★高齢者C型慢性肝炎は肝細胞癌発生の高リスク群であり、IFNとRBVによる治療の対象となる。SVRを目指した治療を行うが、中止・減量をせざる得ない場合でも、IFN少量持続投与による治療期間延長を考慮すべきである。
CS5★高齢者C型慢性肝炎の抗ウィルス療法では、合併症の頻度が増加し、特に1型では薬剤の中止・減量例が有意に増加するため、SVR率は低い。
CS6★高齢者C型慢性肝炎の抗ウィルス療法において減量した場合は72週投与を行いadherence80%以上に維持すると非高齢者と同様の効果がみられる。
CS7★高齢者C型慢性肝炎で抗ウィルス療法による精神神経系副作用が危惧される場合にはβ-IFNを使用する。
4.高齢者肝硬変および静脈瘤治療(指定)
CS8★高齢者の肝硬変ではとくに蛋白・エネルギー代謝異常、ミネラル(Fe, Zn)代謝異常、耐糖能異常などを把握して積極的に栄養療法を行うべきである。
CS9★高齢者肝硬変の腹水治療では、腹水の難治化を来しやすく、利尿薬による肝性昏睡・腎障害の合併頻度も高い。
CS10★高齢者食道胃静脈瘤の内視鏡的硬化療法では、非高齢者と比べ治療成績や治療後の肝機能、腎機能への影響に差はみられない。ただし、治療後の早期(1週以内)に肝不全・腹水の出現することがあり、栄養管理に留意する。
CS11★高齢者であっても、肝硬変に合併する孤立性胃静脈瘤に対するB-RTOは実施可能で、治療結果も良好である。TIPSも同様に可能であるが、心機能などに留意が必要である。
5.自己免疫性肝障害、NASH(指定)
CS12★高齢者自己免疫性肝炎はAIHの1/4を占め、超高齢者にも見られることがある。非高齢者に比べて線維化が強く肝硬変が高率で、より潜在的な進行が疑われる。
CS13★高齢者非アルコール性脂肪肝炎は、非高齢者と異なり女性の頻度、糖尿病の合併、高度線維化、肝癌の合併率が高い。
6.高齢者肝細胞癌(指定)
CS14★高齢者慢性肝炎では肝発癌が非高齢者に比べて高率であり、F2やF3の線維化であっても発癌リスクが高い。発見時の腫瘍径は大きく、進行していることが多い。
CS15★高齢者肝細胞癌は非高齢者に比較して女性の頻度が高く、病因でもC型や原因不明(non B-non C)の比率が高い。また背景肝炎の活動度は低く、肝臓予備能が比較的良好な例も多い。
CS16★高齢者肝細胞癌は、他の全身合併症が無く、PSが保たれていれば、肝予備能に応じて若年者と同様な治療(手術や肝動脈塞栓術、局所療法など)が施行可能である。
CS17★遠隔転移や主要門脈腫瘍栓(Vp4)を有する高齢者肝細胞癌であっても、肝予備能が良好(Child-Pugh A)に保たれていれば、分子標的薬ソラフェニブの使用が可能である。
パネルディスカッション4 (公募 一部指定)
高齢者胆膵疾患診療コンセンサス
オーガナイザー:神澤 輝実(都立駒込病院内科)
乾 和郎(藤田保健衛生大学坂種報徳会病院消化器内科)
クリニカルステートメント:
1.急性膵炎(公募 一部指定)
CS1★高齢者急性膵炎は胆石によるものが多く、アルコール性は非高齢者に比べて少ない。
CS2★高齢者重症急性膵炎(SAP)は胆石症が多く、死亡率は加齢とともに増加する。特に重症感染症を併発して予後不良になる場合があるので、感染症対策は重要である。
CS3★高齢者重症急性膵炎での補液療法は治療に随伴する心不全や肺水腫の発生に注意して厳重な水分管理が必要である。
2.慢性膵炎、自己免疫性膵炎(公募 一部指定)
CS4★高齢者慢性膵炎では特発性が多く、経過中に膵炎様疼痛が無い無痛性膵炎も多く認める。膵外分泌機能低下例には膵酵素補充療法を積極的に行うべきである。
CS5★高齢者自己免疫性膵炎は前期高齢者に多く、黄疸で発症することが多い。高頻度に膵外病変を認める。
CS6★高齢者自己免疫性膵炎においてもステロイド治療が奏功する。しかし、膵癌との鑑別が問題になり、また、悪性腫瘍を合併しやすいので注意しなければならない。
3.高齢者胆石、総胆管結石(公募 一部指定)
CS7★高齢者総胆管結石症は胆管拡張を示し、黄疸・発熱で発症する機会が多い。非高齢者に比較して胆管結石の個数や結石径が大きい傾向にある。
CS8★高齢者総胆管結石症は比較的安全に内視鏡的結石除去が施行でき、超高齢者であっても内視鏡治療が可能である。ただし、基礎疾患により重篤な合併症(とくに呼吸器系)を起こすことがあり慎重な対応が必要である。また抗血小板薬、抗凝固薬服用中は初回の切石のリスクに注意。
CS9★高齢者総胆管結石症は合併症やADLに応じて治療方針を決定する必要がある。内視鏡的結石除去が困難な場合、ERBD留置による2期的処置も有効である。また全身状態不良例やハイリスク症例では切石にこだわらず、ステント留置も考慮してよい。
CS10★高齢者有石胆嚢炎は非高齢者同様、胆嚢摘出の手術適応があるが、全身状態や合併症により胆石を放置しても、胆嚢炎、総胆管結石の再発を認めない場合も半数以上を占める。
CS11★傍乳頭憩室の頻度は高齢者で高まるが、内視鏡処置成績には影響しない。また、高齢者の胃切除後患者においても通常内視鏡で治療困難時には、DBEを使用して良好な治療成績を得られる。
4.胆道悪性狭窄、胆道癌、膵癌(公募 一部指定)
CS12★高齢者悪性胆道狭窄に対して内視鏡的胆道ドレナージ術は有効かつ安全な減黄法である。一期的に短時間で治療することで偶発症の発生を少なくできる。
CS13★高齢者悪性胆道狭窄に関して、超高齢者のPTBDの合併症はそれ以下の年齢と比べ同等(出血や逸脱、穿刺不成功)で比較的安全と考えられる。また超高齢者肝門部悪性胆道狭窄に対してはuncovered SEMSを挿入することでQOLに貢献できる。
CS14★高齢者胆管癌や胆嚢癌、においても可能であれば切除術が基本治療である。化学放射線療法やGemcitabine、S-1による化学療法は高齢者においても適応とされるが、血液毒性への配慮が必要である。
CS15★高齢者膵癌においても可能であれば切除術が基本治療である。化学放射線療法やGemcitabine、S-1による化学療法は高齢者においても適応とされるが、血液毒性への配慮が必要である。
■ 一般演題
口演発表となります。とくに診療ガイドラインにこだわらず広く一般的な高齢者消化器疾患医療に関する演題を募集致します。